テレワークを導入されている企業では、社員同士の打ち合わせやクライアントとの会議の際に、インターネットを利用したビデオ会議(Web会議)を利用していることが多いでしょう。
現在、ビデオ会議サービスには多くの種類がありますが、主に使われているのは下記でしょうか。
- Zoom
- Teams
- Skype
- Webex
- ハングアウト
ビデオ会議サービス人気No.1「Zoom」のメリット
上記の中で今もっとも人気があるビデオ会議サービスが、「Zoom(ズーム)」です。2019年12月の時点で1000万人だったユーザー数が2020年3月にはなんと2億人を突破したとのことです。
Zoomには下記のようなメリットがあります。
- ゲスト(会議に招待される人)は事前準備が不要
- 通信データ量が少ないため動作が比較的安定している(といわれている)
- マイクやイヤフォンの設定が自動で行われる
- 録音・録画が簡単
- 端末の種類(パソコン・モバイルなど)にかかわらずスムーズな画面共有が可能
これらのメリットは、これまで主流であった古参のサービスである「Skype(スカイプ)」としばしば比較されます。ビデオ会議を主催される方は覚えておくとよいでしょう。
ZoomがSkypeより優れている点
ZoomがSkypeより優れているとされる点を挙げます。
- Skypeは事前にアカウントの共有が必要(LINEの「友だち」のようなものです)
- Skypeは通信データ量がZoomの8倍というデータも(1時間の会議でZoomは250MB、Skypeは2000MB)
- Skypeはソフト・アプリの事前インストール時に環境設定が必要
- Skypeは長時間の録音や録画に失敗しやすいというレビューあり(環境に左右されやすい)
- Skypeは画面共有が確実でないというレビューあり(環境に左右されやすい)
中でもZoomの大きなメリットは、「アカウントの共有が不要(相手にURLをクリックしてもらうだけでよい)」「通信が安定している」「環境設定が自動で行われる」という点でしょう。
テレワークが始まる前からビデオ会議を行っていた方は、「聞こえますか?ん?つながらないぞ?」「画面、見えてますか?見えてない?おかしいな?」などという言葉を、おそらく一度は口にされたことがあるのではないかと思います。ですが、Zoomの環境であればビデオ会議に慣れていない方を招待する際も、相手の設定に時間がかからない点は非常に魅力です。
余談ですが、筆者の知人である人事担当者が、テレワークで新卒100人を相手にZoomで新人研修を行ったそうです(100人接続の場合は有料プランの利用となります)。あまりの規模感にとても驚いたのですが、接続障害もなく無事に終えたとのことでした。
Zoomにデメリットはあるの?
そんなZoomにも極めて大きなデメリットが指摘されています。それが、「セキュリティ面の脆弱性」です。
実際に筆者の知人が「招待URLをTwitterで公開したところ、見知らぬ外国人が参加し、大音量の雑音をひたすら流し続けた」という体験をしています。通常であれば「招待URLを公開しなければよい」で済むのですが(テレワークにおいては招待URLは関係者のみで共有することになるはずです)、このURLの生成方式では、機械的に文字列を打ち込むことで簡単に進入することができてしまうのだそうです。
簡単にいうと、「URLを知っている人しかアクセスできないはずの会議に第三者が悪意を持って参加できてしまう」ということです。これは海外では「Zoombombing(ビデオ爆撃)」と呼ばれており、多くの「荒らし」が被害として報告されています。
また、情報流出の危険性も相次いで指摘されており、これまでZoomを利用していた台湾政府、ドイツ外務省などの公的機関、民間企業ではGoogleが組織内での使用を禁止したということです(2020年4月10日)。ZoomのCEOもこれを認め、以後90日間は機能拡充を停止し、セキュリティの強化に努めると発表しています。
Skypeが新機能「Meet Now」をリリース
2020年4月3日、Skypeが「新機能」としてブラウザだけで動作するアカウント不要のビデオ会議サービス「Meet Now」をリリースしました。現時点で対応しているブラウザは、Microsoft Edge(Windows)、Google Chrome(Windows、Mac、Android/iPhone)です。
目玉としては、デメリットのうち「アカウントの共有」「環境設定」を改善した点です。
Meet Nowの使い方
トップページに「サインアップ不要」「ダウンロード不要」とあるように、Skypeの利用でこれまで必要だった「Microsoftアカウント」の取得およびログイン、またSkypeソフトウェアないしアプリのダウンロードが不要となっています。
今回はパソコンの画面での解説をしていきます。まずは右側の「無料の会議を作成」をクリックします。
すぐに共有用のURLが表示され、3つの方法で相手に送信することができます。「リンクのコピー」を使えば、OutlookやGmailを使用していなくても共有は可能です。
共有が完了したら、その下の「通話を開始」をクリックします。
この画面で「ゲストとして参加」をすれば、会議に参加することができます。従来のSkypeよりもはるかに簡単になっています。
ゲストとして参加する場合は、表示される名前を入力する必要があります。これも直感的に理解しやすいですね。「参加」をクリックすると会議の画面に入り、環境設定も自動で行われます。
Zoomのメリットやデメリットはカバーできている?
残念ながら新機能ということで詳細は公開されていませんが、実際に使用してみて判明した部分をお伝えします。
- アカウントの共有が不要なため便利(スマートフォンではChromeの利用が必須)
- 録画機能を使用する際はSkypeアプリを起動する必要がある
- セキュリティ面ではZoom未満?
Microsoft社傘下であり、チャットやビデオ通話サービスで長い実績を持つSkypeということでとても期待したのですが、正直なところ「痒いところに手が届かない」という印象です。
簡単に会議を始めることができ、接続は非常に安定していました(画像・音声ともに)。Zoomと比べてもほぼ遜色なく使えるといえるでしょう。この点はかなりの改善です。
問題は肝心のセキュリティ面です。実はZoomにはパスワード機能があり、Meet Nowには現時点で実装されていません。暗号化レベルもZoomと同程度のため、それを考慮すると全体としてはZoomに劣ってしまいます。
Meet Nowはどんな場合におすすめ?
結論からお伝えします。テレワークにおいては、社員同士でさほど重要な内容の含まれないWeb会議や、Web会議に慣れていない人を招待する際などで利用することが「現時点では」無難といえます。
ただしこれは逆にいうと、セキュリティ面を重視しないという環境下であれば、初心者でも気軽に使うことのできるビデオ会議サービスであるといえるでしょう。
セキュリティ面での指摘がされてはいるものの、圧倒的シェアを占めるZoomは今後もしばらくは利用が続くでしょうし、これからも一番のターゲットになりやすい状況です。わざわざリリースされたばかりでユーザー人口の少ないMeet Nowにおいて、手間をかけて荒らしを始める人は現時点では少ないと想定されます。
ここ数ヶ月はZoom一強だったビデオ会議サービスも今後はどんどんと勢力が変化していくはずです。特に今回各所で大きく報道されたことを受け、ZoomだけでなくMeet Nowも今後セキュリティ面を強化していくことが推測されます。
また、Meet Nowに関しては現時点でリリース1週間ということもあり、これから機能がどんどんと拡充していくはずです。
今後も別のビデオ会議サービス含め、業界の動向について改めて解説していきます。